「お前………!」
以蔵が白鳴に掴みかかろうとした寸前で、以蔵がバタリと倒れ込む。
「以蔵!以蔵……!しっかりして……!!」
慌てて駆け寄り、頬を叩く。
しかし真っ青な顔をして、苦しそうに唸るだけだ。
白鳴は近くにあった湯呑みを取ると、それを以蔵に飲ませるのであった。
………、
…………、
………………、
「何してるんですか?」
「うわっっ!」
ーードサ!
「いてて……!」
「………はい、どうぞ。」
「えっ?あっ、おい!待て、待てよ!!」
…………
……………
……………………
「……ぞう?」
「………………。」
「以蔵!!」
「………ん、……し、師匠…!!?」
慌てて飛び起きる以蔵。辺りを見渡すと、そこは広間ではなく自分の部屋であった。しかも、布団まで敷いてあった。どうやら、あのまま気絶してしまったようだ。
「目が覚めたか?」
「はい、すみません…。」
「まあいい。完璧な人間などいないからな。それで……?」
「それで とは?」
「さっき寝言を言っていたようだが、何かあったのか?」
「い、いえ……。別に……。」
「なら、もっとしっかりしろ!白鳴さんに世話を焼かせるな!」
「白鳴……ですか?」
「ああ、さっきまでここにいた。お前のことを心配していたぞ。」
「………。」
「分かったらさっさと、薩摩藩邸へ行って来い。さっき使いが来た。」
「分かりました。………あの、師匠。」
「なんだ?」
「俺の他にあの時に、生き残った門下生は………いませんでしたよね?」
「………ああ。」
「なら、いいのです。行ってきます。」
以蔵は寺田屋を出て行く。
忘れたくとも忘れることの出来ない記憶………。
確かにあの時に、自分と同じ門下生は目の前で無残に死んでいった。
なのに、もしかしたら……などと、心の何処かで思っていたのだ。
「……情けないな。」
以蔵は複雑な心境の中、薩摩藩邸へと向かうのであった。
白鳴は武市の使いで、町を歩いていた。
「白鳴ちゃん。」
「沖田さん…。」
「どうしたの こんな所で?」
「使いに来たんです。沖田さんは今日も非番なんですか?」
「まあね。そうそう任務なんてないし……。」

