「だが、気がきかない女は達が悪いな。龍馬が言っているのは、そういうことじゃ……。」


「以蔵君!」


言いかけた以蔵を一喝する厳しい顔をして中岡。


それ以上言うな、と左右に首を振る。


「………悪かった。」


「…………。」


皆の表情が少しだけ曇っていた。


「さて、それじゃあ俺達も行きましょう 龍馬さん!大久保さんを待たせちゃあ、悪いッスから…!」


「おう、そうじゃのう。それじゃあ、行ってくるぜよ。」


中岡と龍馬が部屋から出て行く。白鳴もその後ろをついて行き、二人の見送りに出た。


「……龍馬さん。」


「なんじゃ?」


「やっぱり、あの着物……、遠慮なく着させていただきます。」


「無理することはないぜよ。どんな格好でも白鳴さんは白鳴さんじゃからのう…!」


「龍馬さん……。」


「じゃあ、行ってくるッス姉さん!」


「いってらっしゃい。」


開いていた玄関の扉がゆっくりと閉まる。


あの時、中岡が以蔵を止めたのは、白鳴を巻き込まないために、あえて以蔵を一喝したのだ。


女物を着ていれば、不本意に絡まれることも危険が及ぶことも少ない。万が一にも備えて、あえて龍馬達は白鳴のために、女物の着物を誂えたのだ。


いまさらながらに、その意味を悟るのであった。








白鳴が広間へと戻ると、以蔵だけがその場に残っていた。


白鳴は皆のお膳を片付けて行く。


「……お前は、いったい何者なんだ?」


「…………。」


問いに応えずに片付ける。


「女のくせに女物の着物は着たがらねえし。女なのに……刀が扱える。ただの迷子の女にしては、妙に出来過ぎだがな?」


「……それは旅をして来たからって言わなかった?ここは治安もよくないし、刀ぐらい持ってないと、何かあった時に困るわ。」


「お前、あの剣術何処で学んだんだ?それに、ただの女が刀を持っているはずがない。何処で手に入れたんだ?」


「………ねぇ、以蔵。」


「なんだ?」


「にんじん嫌いなの……?」


「はぁ!?話しをはぐらかすな!!………むぐっ…!!」


「残したら武市さんに怒られるわよ。」


白鳴は話しを遮るようにして、以蔵のお膳の人参を口の中に突っ込んだ。


しかし、以蔵の顔色がどんどん真っ青になっていく。


「……うう!………うっ……!」


「以蔵?」