昔、武市に習った時のことを思い出す。目を閉じて精神を集中させる。
「…………やあっーー!!」
「!」
勢いよく踏み込み、目の前の敵を斬る。しかも、振り上げるのではなく、その途中から、攻撃に転じる。
間違いない!この剣技は……!
そう確信した以蔵は、白鳴の腕を掴む。
「!」
「お前!その剣は何処で習った!?」
険しい表情をした以蔵が、声を上げる。
白鳴の剣技は武市の剣技にそっくりなのだ。この剣術は師匠である武市しか知らない剣技だ。それを弟子でもない、白鳴が知っているのだ。
「………。」
「言え!何処で会得した!?」
「………!」
言えるはずがない……。
昔、武市に習ったのだと……。
言えば白鳴は白鳴でなくなってしまうのだ。
「!!」
白鳴は以蔵の腕を振り払う。
「何処で習おうが、私の勝手でしょう?!強くなるために、受けた恩を返すためには、この剣術でないとダメなの!」
「あっ!こら 待て!!」
白鳴は竹刀を以蔵に突き返すと、その場から離れて行った。
今やあの剣術は師匠である武市と、弟子である以蔵しか知らない。
それを知っていた白鳴。
「……いったい、あいつは何者なんだ……?」
以蔵の中で疑惑が生まれるが、今はそれに応える者はいなかった。
「…………恩返しか………。俺も似たようなものだな……。」
手に握られている竹刀を見つめる。どこか、白鳴は自分と似ている気がした。
白鳴は部屋へ戻っていた。思わずあんなことを言ってしまったが、以蔵は確実に白鳴を疑っている。
同じ門下生なのだから、剣術を知っていて当然のことだ。だが、白鳴はただの他人でしかない。その者が知っていたとなると、疑われても仕方のないことだ。
「…………。」
白鳴は壁に寄り掛かるようにして座り込んだ。
「白鳴さん いますか?」
「は、はい……!」
白鳴は慌てて身なりを整えると、武市が中へ入って来る。
「……ご飯の用意が整いましたので、呼びにきました。」
「ありがとうございます。」
「………。」
「……?」
武市がじっと白鳴の姿を見る。
「どうかなさいましたか?」
「着物を着替えたのですね。」
「はい、こっちが私の着物ですから。」
「……やはり、僕達といると、女の格好はできませんか?」

