「い、いえ…。そんなことはありません。」
白鳴は立ち上がると、押し入れから布団を出そうとする。
「………?」
取り出そうとすると、何かがつっかえているのか、なかなか思うように出てこない。
「…………。」
もう一度押し戻して、出しやすくするために、少しだけ角を持ち上げる。
しかし、布団の重みを支えきれずに、雪崩のようになって、白鳴の上に崩れる。
「!」
「白鳴さん…!」
武市も慌てて、駆け寄る。
「……す、すみません…。」
布団からそそくさと、はい出る白鳴。なんたる失態……。恥ずかしくて、武市の顔がまともに見れない。
白鳴は布団を抱えると、何事もなかったように、畳みの上に布団を敷き始める。
「………白鳴さん。」
「………!」
近寄って来た武市の腕が、白鳴へと伸びてくる。
フンワリと白鳴の髪を撫でる。
「……これで、大丈夫だろう。」
「……!」
そこで、武市が乱れた白鳴の髪を、整えただけだということに気づく。
ますます、恥ずかしくなってきてしまう。
「……あ、ありがとうございます…!」
白鳴は赤くなった顔を見られないように、布団を敷いて行く。武市はその横顔を見て微笑むのであった。
それから後に、白鳴は自分で繕った袴に着替えていた。やはり、ここにいる以上は、守られるだけ女ではなく、影ながらに支えることの出来る女にならなければならない。
今まで着ていた着物は畳んで、押し入れの中にしまう。
「…………。」
すると、庭から竹刀を振るう音が聞こえてくる。
白鳴は庭へ出て、音がする方へと向かう。
庭では以蔵が剣の稽古をしていた。
立ち合いや刀さばきも見事なものである。さすが、武市が護衛にあたらせるだけの腕前がある。
「以蔵。」
「?」
「私にも竹刀を貸して。」
「なぜだ?」
「私も稽古がしたいから。」
「……女がむやみに、握る物じゃない。」
「大丈夫。私もそれなりには、刀を扱えるから。」
「………そうか。」
白鳴の姿と腰にさしてある刀を見遣る。本当に刀が扱えるようだ。なら、竹刀を握るぐらいなら大丈夫だろう。
「ほら。」
以蔵は近くにあった竹刀を白鳴に投げる。
「ありがとう。」
受け取った竹刀をかまえて、稽古を始める。

