「ああ、無事で良かったな。」
「………。」
「師匠、先程は無礼を働いて、申し訳ありませんでした。」
「もういい。僕は部屋で休む。お前はもう下がっていろ。」
「はい。」
「白鳴さん。」
「はい…。」
「貴女は後で、僕の部屋へ来なさい。いいですね?」
「はい。」
武市は去って行く。
「……まったく、いい迷惑な奴だな。迷子なら、もう少し大人しくしていろ。勝手に動き回ると迷惑だ。」
「………仲間を助けることが、そんなに迷惑なことなの?」
白鳴は知らずのうちに、以蔵を睨みつけていた。
たまたま、今回は運が良かっただけなのかもしれない。だが、次にも助かるという確証はどこにもない。
仲間なら助け合うことは、当然のことのはずだ。白鳴はずっと考えていた疑問を以蔵にぶつけていた。
「………はぁ……。」
以蔵が呆れたようにため息をつく。
「もう一度言っておくが、お前はただの迷子の娘だ。俺達とはなんの関係もない、ただの部外者で居候なだけだ。そのお前が、俺達の仲間になんて、なれるわけがないだろ?」
「…………。」
「勝手に行動をされたら迷惑だ。分かったら、大人しくしていろ。これ以上、師匠に迷惑をかけるな。いいな…?」
念を押すように言うと、以蔵はその場から立ち去って行った。
ただの迷子の娘……。
仲間になんてなれない………。
確かに、武市達の立場からすれば、その通りだ。白鳴は迷惑以外の何者でもない。ただの普通の娘なのだ。
その娘が仲間だの知ったような口を聞いて、武市達に迷惑をかけた。以蔵がそう言うのも当然だ。
きっと武市もそう思っているのだろう。
役に立つために、恩返しのために、ここへ来たのに、これでは本末転倒である。
白鳴は武市の部屋へと向かった。
部屋の中では、武市が自分の手の平を眺めていた。
今までにあったことが、次々と思い出される。
それも、すべて白鳴の姿だ。
「………ただの女子には見えないな……。」
だからこそ、たった一人で男装までして、旅をして来たのだろう。
「………。」
本当に大した娘だ。知らず知らずのうちに、武市は微笑んでいた。
「武市さん、白鳴です。」
襖の向こうから白鳴の声が聞こえてくる。
「入りなさい。」

