「それにしても、意外な所で会ったね白鳴ちゃん。」


「……!」


「まさか、僕のこと忘れてないよね?」


「沖田……さん。」


「街中で見かけた時はまさかと思ったけど、まさか本当に白鳴ちゃんだったとはね。」


「私も……、沖田さんが浪士組だとは思っていませんでした。」


まさか、武市達を捕らえようと血眼になっている浪士組に、沖田がいるとは思ってもみなかった。


こうして改めて見れば、本当に沖田が浪士組なんだと実感してしまう。


それが妙に悲しかった……。


「旅回りの役者さんか……。だから、あんなに舞いが上手かったんだね。」


「!」


「あの後からも、お芝居の練習をしてたんでしょう?あの土方さんを黙らせちゃうなんて、君もなかなかやるね。」


「…………。」


「……とにかく今夜は大人しくしていたほうがいい。僕もそうだけど、皆気が立ってるから。それに、あの人達に見つかったら大変なことになりかねない。」


「あの人……?」


「【芹沢鴨】この浪士組の局長だよ。なんであんな人が浪士組の局長なのかは分からないけど、とりあえず大人しくしてた方がいいってこと。暇なら話し相手にくらいはなってあげるよ。」


「……ありがとうございます。」


いろいろ考えることは多いけど、ひとまずここは大人しくしていたのほうがいい。


夜になっても、重苦しい気は逸れなかった。それよりますます、気が重たくなってきてしまう。


ずっと思い続けて来た武市と龍馬。


彼らの役に立ちたくて、身を偽ってまで、ここまで来た。だが、周りには敵が多過ぎる。


市中の見回りから浪士組まで、満足に表を歩けない身の上だ。


そして、その敵である浪士組の中には、沖田と前に会った永倉や平助もいる。


なんで彼らが武市達を追わねばならないのか……?


武市達が何をしようとしているのか、今の白鳴には全くもって分からなかった。


ただ今は膝を抱えてじっとしているだけ。


部屋に燈された明かりが、部屋の中を照らす。


白鳴は立ち上がり、部屋の障子を開ける。


「………。」


月明かりがボンヤリと、夜空を飾っていた。何処からともなく風が吹き、白鳴の髪を揺らす。


「……眠れないの?」


「!」


見上げるようにして、沖田が部屋の前に座っていた。


「……ええ。」


「帰りたい?」