白鳴は気づかれないように、顔を伏せる。

「よう【平助】今帰りか?」


「おう、【左ノ】さんも【新八】さんも、これから巡察か?」


「ああ、そうだ!今日こそ坂本達をこの俺の手で、ビシッと捕まえてやるんだ!」


「それより平助、そいつは誰だ?」


そう言われ白鳴に目線が行く。白鳴は顔を伏せたままだ。


「ああ…こいつは隊士達が間者と間違えて捕まえて来たんだよ……。」


「……そうか。」


「そりゃあ災難だったな!まだ、小せいのに、可哀相なこったな。まあ、男なら腹の一つや二つ、切ることも恐れてはならんからな!」


「……やめて下さい!」


楽しげに白鳴の頭をわしゃわしゃとする永倉の手を、叩き払いのける白鳴。


「……った!全く気の強いガキだな…。」


「その辺にしといてやれよ【新八】。これから、土方さんに会うってんだ。俺達が邪魔してる場合じゃないだろ。」


「それもそうだな。」


「で、土方さんは何処にいるんだ?」


「多分まだ部屋にいるんじゃねぇかな。なあに、あの人も話せば分かってくれるさ。じゃあな平助!」


二人は巡察へと向かった。


「じゃあ、俺らも行くぞ。」


平助に縄を握られたまま、白鳴は土方のいる部屋へと向かった。


長い廊下を歩いていく。さすがに緊張をしてきて、手に嫌な汗をかき始める。


浪士組は龍馬達を捕らえようと必死になっているようだ。さっきの無茶苦茶な捕まえ方といい、永倉の言葉といい、白真剣捜索していると言っていい状態だ。


相手から見れば白鳴はただの浪人でしかない。いたしかないとはいえ、下手に話せば今度こそ間者に間違われ、殺されかねないのだ。その上龍馬達にまで迷惑をかけるかもしれない。


それだけは絶対に避けなければならない。白鳴はそう決め、前を行く平助の背中を見ながら、前へ進んで行った。


その様子を、少し離れた場所から沖田が見ていた。


「…………。」


やはり格好は違うが、見間違うはずがない。あれは間違いなく白鳴だ。


沖田は白鳴達が向かった部屋へと足を向けた。


「土方さんいるか?」


「おう平助か、入れ。」


部屋の襖を開け、中へと入ると文机に向かっている人がいた。


長い髪を一つに縛り上げ、整った顔をしている。少し顔色が悪いのは、追われている仕事のせいかもしれない。


机の周りには山のような書簡が積み上げられていた。