気配だけで気づいたのだろうか…?白鳴は周りには聞こえないように話しかける。
「……これから、何処へ行くんですか?」
「浪士組の屯所だ。」
「………。」
前に行ったことを思い出す。だが、今は立場が違う。それにあの時は運が良かっただけなのかもしれない。
「……お前女なんだろ?」
「え……?」
「なら、気をつけたほうがいいぜ。これから行く所には鬼がいるからな。」
「鬼……?」
「そう、とびきり怖い鬼!」
「………。」
「そう緊張しなくても大丈夫だよ。俺がついててやるから。すぐにお前を解放してやる。」
「………。」
心配してくれていたのだろうか、身体は振り返らないが、目だけは笑って見せてくれていた。
白鳴達はそのまま浪士組の屯所へ向かった。
一方、白鳴がいなくなったことで、【長州藩邸】は大騒ぎとなっていた。
「た、高杉さん!今なんて言うた!?」
部屋に飛び込んできた高杉に、全員の注目が集まる。
「あの娘がいなくなっただと…!?」
「いったいどういうことッスか!?」
「すまん!俺としたことが、少し目を離した隙に、見失ってしまった!!」
「……ちゃんと捜したのかい晋作?」
「ああ!そこらじゅう捜した!でもいないんだ!!」
高杉のことだから、必死になって捜したはずだ。
待っている場所にいた者の話しでは、あの浪士組に捕まったという話しも出ていた。
嫌な予感がする……。
「ワシも捜しに出てみるぜよ!」
「俺も行くッス!!」
それぞれにも嫌な予感がざわつき、龍馬達がいても立ってもいられず、出て行こうとする。
「やめておけ!!」
「!?」
大久保の叫び声で、皆の動きが止まる。
「……今はあの浪士組が町にいるはずだ。今君達が動くのは危険すぎる。」
「そんな悠長なことを言っている場合じゃないでしょ!?」
「そうぜよ!あん娘が浪士組に捕まったかもしれんちゅうのに、黙っていられるか…!」
「俺が兵を率いてなんとしても助け出す!!」
「……晋作!!」
「いい加減にしろ!!」
「!!」
「!?」
また大久保の一喝が飛び、全員の思考と動きを止めてしまう。
「……あの娘が心配なのは分かるが、君達まで見境がなくなってどうする!?特に坂本君!」
「!」

