「ああーー!うるせーな!!そんなんだから、俺達は町の人達に嫌われんだよ!!ちったぁ大人しくしとけよな!?」


子供を叱りつけるようにして、後ろにいる隊士達に怒鳴る男の子。


「……ったく!」


浪士組と言えど、後ろにいる隊士達は全然話しにならないようだ。


「あんた名前は?」


「………。」


「仕事上一応、名前は聞いておかないといけないんだ。」


「そんなこと私…、俺の知ったことではありません。助けて頂いてありがとうございました。」


男の子に頭を下げ、踵を返そうとすると、男の子が白鳴の腕を掴む。


「ちょっと待った!知ったことはないだろ!?刀を刺している以上は、自分の肩書きぐらい明かしたらどうだ!?じゃないと、お前はずっと、間者扱いされんだぞ!?」


「!」


そいつは間者だ…!!と言っていた以蔵の言葉を思い出す。あの時は武市や龍馬に気を取られていたが、確かに以蔵はそう言った。


身元も知れない男が、刀を刺していたら、間者と怪しまれても文句が言えないのだろう。


だからと言って、白鳴はどこの藩の者でもない。世間から見れば、浪人にしかすぎない。そんな者が身元を明かしたとて、下手な芝居にしか思われない。


「…………。」


白鳴は黙っているしかなかった。


「言わないなら、俺達について来てくれないか?一応取り調べないといけないからな。」


「……。」


白鳴は両手を縄で縛られ、男の子を先頭に連れて行かれる。


いたしかないこととはいえ、なんだか気分が重い。


「………。」


町の人々は変わらずにヒソヒソと話していたり、哀れみの目を向けたりしていた。


残して行くことになる高杉を気にしながら、時折後ろを振り返りながら、白鳴は浪士組に連れて行かれた。









角を曲がり、川の近くまでやって来る。


白鳴はただ黙って、縛られている縄を見たり、前を歩く男の子の背中を見たりしていた。


刀は取り上げられてしまっていて、逃げようにも囲まれていて逃げられない。


今頃、高杉が戻って来て心配していないか気になる。せっかく会えたのに、こんな形で武市とも離れることになると思うと、耐えられなくなってしまう。


辺りを見渡し、脱走の機会を伺う。


「……逃げるなよ?」


「!」


「逃げても捕まるだけだ。」


目の前にある誠の文字を見つめる。