明美が目を細めて、白鳴達を見る。


その目はいつになく真剣なものであった。


「遅れを取り戻したい気もしますが、時を戻すことは出来ません。故に、これから二人には試験までの間、朝夕を問わずに、稽古に打ち込んでもらいます。幸い二人には芸妓としての素質が備わっている。後は独自の《舞い》だけです。」


試験の最大喚問とも呼べる《舞い》。


それが踊れなければ、他が良くても、試験には合格出来ない。なんとしても、極めなければならない。


これは二人にとって願ってもない好機だ。

明美は二人の前へとやって来る。


「白鳴、桜、覚悟はいいですね?」


「はい。」


「はい!」


二人は真っすぐと明美を見つめ、返事を返した。


その真っすぐな心と覚悟を明美も感じとった。


「……よろしい。では、これから二人で町へ出かけなさい。」


「……?」


「町へ出て、これを買ってきてもらいたい。」


袖から紙切れを取り出し、白鳴に差し出す。


そこには、店までの地図と数が書かれていた。


「これは……。」


「そこの店の菓子は有名でな、一度食べてみたいと思っていたのだ。それに、お前は今まで苦労ばかりしてきたからな。桜と一緒に行って来なさい。」


お金の入った袋を手渡す。


「明美姉さん…!」


「夕刻までには戻りなさい。いいですね?」


「はい。」


「桜、白鳴を頼みましたよ?」


「はい!」


二人は明美の配慮によって、町へと出た。








遊郭で過ごす者にとって町は珍しいものでしかない。


「わあーー!すごい!白鳴ちゃん、あれ見てー!」


すっかり子供のようにはしゃぐ桜。あれこる見ては立ち止まり、騒ぐのであった。


ふと、風を感じると、この前来た桜の前まで、やって来ていた。


薄紅の花びらが歓迎するかのように、舞い散る。その艶やかな舞いのような花びらとそれをなびかすを風を感じながら、目を閉じた。


こんなふうに、舞いを舞えるのならば、どんなにいいものだろうか……。


そんなことを考えていると、後ろから声がかかる。


「あれ、君は……。」


「!」


慌てて後ろを振り返ると、目を丸くしている沖田が立っていた。


胸がドキンと飛び跳ねる。


「あの時の娘だよね?」


「……は、はい。」


まさか、またこんな所で会うとは……。