上座に座る大夫の音頭で、皆が一勢に食べ始める。
ずっと長い時間、お客様のために心身を崩して来たのだから、この時ばかり皆ホッとしている。
中には、お風呂に入って来た者も入れば、着物を軽装に着替えている者もいた。
「ここで皆に知らせがある。」
「?」
大夫からの言葉で、皆が上座の方を振り返る。
「今度、見習いの昇格試験があることは、もう皆が知っていることだろう。この試験は見習いの者が、立派な芸妓になれるかを見るものである。故に日頃からの稽古や経験が決め手ととなるだろう。」
妹各の間に緊張が走り抜ける。
この試験で、その者の人生が決まると言っても過言ではない。
それは、この場にいる見習い全員が同じことである。
「そこでだ、その試験を七日に執り行うこととする。」
「!」
周りもその言葉に驚いて、騒ぎ始める。七日と言えば来週だ。
それにはもう日数が残されていない。
「故に、見習いを含め、芸妓達は心してこの試験に臨むように!……白鳴、白鳴は何処にいる?」
突然、名前を呼ばれて驚きながらも、手を挙げる。
「……はい、ここにおります。」
「お前のしたことは、芸妓にはあるまじき態度だが、あちらにも非があることは確かだ。故に、あの時のことは水に流すこととし、今日からまた明美の元で稽古に励むように。」
「……!」
「【桜】!お前もだ。共に稽古に励みなさい。」
「!」
桜と呼ばれた娘が、驚いたように顔を上げた。
「分かったら二人共、返事をしなさい。分かったね?」
「……はい!」
返事をし、顔を緩せる。また、稽古が出来るのだ。今度は誰にも邪魔されずに、堂々と稽古が出来るのだ。
こんなに嬉しく思うことはない。練習がしたくて、身体がウズウズしてくる。
白鳴はご飯を食べ終えると、急いで明美の部屋へと向かった。
明美の部屋へ来るのも久しぶりだ。なんだか緊張してくる。
「失礼します。」
部屋の襖を開けると、そこには桜が先に来て座っていた。
その横に白鳴も腰を下ろす。
桜はあの時、白鳴の手伝いをしてくれた娘だ。白鳴と事情は違うが、同じく稽古が出来なくなっていたのだ。
明美は窓辺に座り、外を見ていた。上座には気にいっているのか、あの時に持って行った桜が生けてあった。
「………もう、時間がありません。」

