「そんな冷たいことを言うなよ。俺らはまだ京に来て間もないんだよ…。飲み屋で有名って聞いたから、試しに来てみたら、とんでもなく高くてよ……。」
つまり、お金を払えずにここへ押し込められた、ということらしい。世間知らずの奴が良くやることだ。
「それはお気の毒で。」
「仲間が金を取りに戻ってるはずなんだよけどよ…、知らせがないんだよな……。お前知らないか?」
「知りません。それにこんな所で飲みに来るような人が、友人のために戻ってくるなんて考えにくいのですが……?」
ここは遊郭だ。たいていの男が自分のことしか考えていない。仲間がこんな目にあっのだから、逃げられて得をしたとしか、考えていないだろう。
「そんなはずねぇ!!あいつらは江戸にいた時からずっと一緒にいた奴らなんだ!仲間を見捨てるような奴じゃねぇよ……!!」
仲間を信頼しているのか、そこまで言う男は珍しいものだ。だが、それも時期に分かることだ。
「なら、いずれ戻ってくるでしょう。私達はこれで失礼します。」
洗ってあった食器をかごの中にいれ、白鳴達は立ち去ろうとする。
「待ってくれ!!」
「……まだ、何か…?」
「は、腹が減ってんだ……。頼むから、何でもいい、何か食うもんくれ……。」
「…………これを持って行ったら、持ち場に戻っていいわ。」
「え…!」
「後のことは私が何とかしておくから。」
「……わ、分かった。」
あの男に関わっては何をされるか分からない、とりあえず娘を帰してからのほうがいいだろう。
男に聞こえないように言うと、白鳴達はそれぞれの持ち場へと戻った。
それから数刻、男が待っているという仲間は現れずにいた。やはり、白鳴の予感は的中したようだ。
ここで逃げ切れたのだから、例え友人でも戻っくることはない。
だいたいの片付けを終え、甘露梅や朝ごはんの仕度をする。
ふと、あの永倉という男の事が頭に浮かぶ。
あれほどまでに仲間を信頼している者は、見たことがなかった。今もまだ外の漬物桶の中で待っているのだろうか……。
そう考えると、何とかしてやりたくなる。
ふと、釜戸の蓋が炊き上がりを知らせて、白い煙りが出ていた。
「…………。」
白鳴は誰もいないのを確認しながら、朝霧の中を進み、永倉がいる茂みへとやって来る。
「………永倉…さん?」

