「キリュウ・・・。」


低く重い声が、圧倒的な存在感を放ち、その場を支配した。


静かに呟いた、ほんの一言のみで、この部屋の乱れた雰囲気を、ハクリュウは凛と張り詰めた空気に、変えてしまったのだ。


キリュウの顔に、緊張が走る。


だが、この世にはもう居ないはずのハクリュウを見て、あからさまに納得できないといった態度であった。


「ハクリュウ王陛下は、僕達天界の住人を騙したのですか?
亡くなってなど・・・いなかったのですね。
なぜ、こんなウソを?」


「そなたは、知らなくてもよいことぞ。
それよりも・・・。
覚悟は出来ておろうな、と、言いたいところだが。
我は、竜王ではない。
この件は、コウリュウに一任致す。
ヤヨイが我が手に戻ったのだ。
それだけで、今はよい。」


ハクリュウは腕の中に居るヤヨイを優しく見つめると、肩に手を回し部屋の外へ出て行こうと、後ろを向いた。