「しかし陛下。
呼び捨てなどと、それではあまりに失礼が・・・。」


「コクリュウ。」


コクリュウの言葉を制したのは、ハクリュウである。


「真面目なのは美徳だが、融通が利かないのは、賞賛には値せぬ。心得よ。」


「・・・はっ。」


コクリュウはソファーに腰掛けたまま、深く頭を下げた。


「で・・・そなたは何故、ヤヨイを連れ去ったのだ。」


「はい。キリュウに、言われたのです。」


「キリュウ!?」


ハクリュウはキリュウの名を聞いて、あからさまに不愉快な顔をして見せた。


コクリュウが誰かに動かされての行動だと、予想してはいたのだが、まさかキリュウの名を聞く事になろうとは。


キリュウという名は、ハクリュウの端正な顔を歪ませる程に、苦い名だったのだ。


ハクリュウの脳裏に、忌まわしい記憶が、昨日の事のように蘇える。


それは、天界統一するに至った記憶であった。