そんなしょぼくれたコクリュウには目もくれず、民たちは扉から堂々と姿を現したハクリュウに気づいて、沸き立った。


「「「おぉ!竜王陛下!」」」


一斉に民たちは歓迎の声をあげた。


それを聞いてハクリュウは軽く眉を上げ、歩みを止めずに民たちを一喝する。


「うるさい!静まれ!」


ハクリュウの言葉は瞬時に広間を黙らせた。しかし民たちの顔はかつてのように恐怖におののいてはおらず、むしろ嬉しそうにさえ見える。


三人は階段を上り、中央に置かれた玉座にはコクリュウが座った。その玉座を挟んで右にコウリュウ、左にハクリュウが立つ。


コウリュウはハクリュウが位置についたことを確認してからひと呼吸置くと、一歩前に進み口を開いた。


「兄上様はご存命である。」


広間は静かなままで、皆、次の説明を待っているようであった。もう一度ひと呼吸置いてから、コウリュウは言葉を続ける。


「この度は兄上様のご事情により、どうしても崩御したことにせねばならなかった。
天界を欺くという罪の重さを覚悟の上で、私は兄上様より竜王を引き継いだのだ。
よってこの事が公になった今、私は単なる罪人に成り下がる。
そして、天界を欺いてまでも竜王を放棄した兄上様とてまた然り。
過去も未来も、いかなる事情をもってしても、罪人が竜王であってはならぬ。
よって、竜王を次の者に託すものとする。」