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生まれたとき、リョクの両肩には緑色の鱗が数枚着いていた。
それを見た両親、特に父親は大袈裟なほどに心配したものだ。人間として人間界で暮らすこの子に、龍の能力が開花しないように、と。

ーーー。

神秘な黒で統一された部屋に、溢れんばかりの緑色の眩い光が解き放たれた。


それと同時に強い突風が突き刺さり、コクリュウに防御の体制をとらせた。


風が徐々に収まりコクリュウがゆっくりと目を開けると、そこには黒い部屋の黒い壁はなく、代わりにあったのはオーロラのように色が折り重なったいつもの天界の空と、そこを游ぐエメラルドグリーンの龍の姿だった。


コクリュウは咄嗟に声も出せずその場に立ちすくみ、しばらく目の前に漂う龍を呆然と眺めてしまった。


「キュオ〜ン・・・」


戸惑いを含んだ緑龍の甲高いいななきに、コクリュウはハッと我に返った。


『コクリュウ、コクリュウ、私・・・。』


コクリュウの頭の中に響いてくるのは、紛れもなく狼狽えているリョクの声である。


「リョク様、私はなんという罪を犯してしまったのでしょう・・・」


自責の念に駆られ、コクリュウは緑龍に手を伸ばした。そして緑龍を鎮めるため自らの体から黒い光を放ち、徐々に体の輪郭を無くしていった。