これからコウリュウが切り出すであろう話を、イオリは容易に想像できた。それはイオリが一番避けて通りたい話しであり、聞きたくない内容である。


「イオリ・・・俺は・・・。」


「あわわわわわわわ。」


コウリュウが話し出すと、イオリはまさかの行動に打って出た。


両耳を手で塞ぎ、ぎゅっと目を瞑り、大きな声を出し始めたのだ。


「おい、イオリ。」


呆れるようなため息混じりのコウリュウの声。


コウリュウは立ち上がってイオリの側に来ると、その両手首を掴んで耳から離した。


「イオリ、聞け。」


そうは言われても。


イオリは下を向いて叫んだ。


「ご無礼を承知で申し上げます。
コウリュウ様がコハク様以外の女性の名を呼ぶのを、私は聞きたくありません。
コウリュウ様のお隣に、コハク様以外の女性が立たれるのも、見たくはありません。」


「イオリ・・・。」


コウリュウは掴んでいたイオリの手首をそっと放す。


軽く唇を噛んでワナワナと肩を震わせる目の前のイオリに、コウリュウは自分でも驚く程に戸惑っていた。