ポワンとした表情で自分を凝視するリョクを見つめ返して、コクリュウは小さくコホンと咳払いをすると、改まった声を出した。


「これは名を名乗ることもせず、とんだご無礼を・・・。」


堅苦しくそう言われたのだが、青年の言葉は最早そっちのけで、父とも叔父とも違う雰囲気を持つこの青年から、目を反らす事の出来ないリョク。


一方、一身に自分を見つめるリョクに、何かしらの熱意を感じ取ったコクリュウは、不安げに小首を傾げた。


「あの・・・。リョク様?」


なにか失礼でもあったのではないかと、伺うようにコクリュウは小さく問いかけてみる。


「あっ。ごめんなさい。」


リョクはハッと我に返ると、コクリュウから慌てて目を反らし、恥ずかしそうに口元に手を当てた。


「いえ、私の方こそ失礼致しました。
私はコクリュウと申します。
リョク様のお父上でいらっしゃる、ハクリュウ様より仰せつかって、こちらへ参った次第です。」


リョクの緊張をほぐすかのように、コクリュウは柔和な笑みを浮かべて、軽い説明をした。


「黒龍!?
今、黒龍と仰いましたか!?
その上ハク様の事を、白龍だなどと!!」


そのコクリュウの言葉に、過剰な反応を見せたのは、リョクの隣に控えていたエミであった。