ブルブルブル…




亜子の携帯が鞄の中で震えだす。




着信



桜 隼人




一瞬ためらったが、携帯のボタンを押す。




「もしもし…」



「亜子、さっきはごめん。あの子とは話をしてただけやから。」



「そう」



「まあ、場所が場所やから、勘違いされても仕方ないねんけど、何にもないで。」




「可愛い子ね、隼人とお似合いだよ。」



「ほんまに、何にもないねん。信じて。
今から卒業式まで、お互い忙しくなると思うねん。
多分あわれへんと思うから、卒業式、終わったら、音楽室にきてくれへんか?
待ってるで。
来るまで待ってる。」





ヤキモチを妬くアタシと
逢いたいアタシがいて…




「それまで考えとく。」




こうやって、素直になれないアタシがいる。




本当は卒業の日に逢いたいのにね。