「ちょっ、ちょっと田口くん!田口くんってば!」
「…、」
店を出て、そのまましばらく歩いてきた俺はその声にふと我に返る。ようやく足を止めて見れば、俺に腕を引かれたままついてくるのは戸惑うような驚いたようなその顔。
「…すみません」
「いいけど…どうしたの?いきなり。用って?」
「えっ、あー…いや、その…」
咄嗟に用があると言ったものの、それ以上は考えておらず思わずしどろもどろになる。
「…そ、そういえば…あの、さっき滝さんと話してたことって…」
「え?あぁ、さっきの『俺について来い』ってやつ?聞いてたんだ」
「す…すみません」
「ううん、いいよ」
椎菜さんはそう笑って、髪を右耳にかける。



