絶対に、と言った仁に聞きたいことは沢山あったけれど、なにひとつ聞き返すことができなかった。
聞ける雰囲気じゃなかった。



「彼女もそれを望んでる」



そう言った仁の表情は、悲しそうで、こちらも悲しくなる。


今考えてる質問を仁にぶつけるのは少々軽率な気がした。


今までは話せない相沢のことを想って近づくなって言っているのかと思っていたけど……それはどうやら違うみたいだ。



「冬樹、これだけは言っとく」


「…………」


「優夜ちゃんは冬樹が思ってるほど綺麗じゃない」



なっ!

なんだよそれ!



「意味わかんねぇーよっ」


「これは冬樹のためだし、優夜ちゃんのためだよ。これ以上優夜ちゃんに近づかないであげて」



なんだよそれ!


全然意味わかんねぇーよ!


って言おうとした瞬間にタイミング良く授業開始を知らせるチャイムが鳴って、先生が入って来た。


結局何もわからず終いでモヤモヤだけが心の中に残った。


……俺のためってなんだよ。


相沢のためってなんだよ。


大事なことはなにも教えてくれないくせに。


関わるなとは言うんだな。


……相沢と仁の間にはいったい何があるっていうんだよ。


普段、あれだけ仲の良い二人なのに。
なにかヒミツがあるってことなのか。


……ザーザー。


降りしきる雨の音が一層強くなった気がした。

梅雨明けは、もうすぐだ。