廊下を歩く俺たちにみんなが好奇な目線を向けている。
見られているのがすごくわかる。
そんなにジロジロ見るなって。
ただ、歩いているだけなのに……。
そしていざ教室に入ってクラスメイトたちが相沢の存在に気づくとみんながいっきに話し声をやめた。
シーンとなる教室に相沢がキョトンとしている。
「……相沢さん……」
一瞬みんなが青ざめた表情をして「これはやばい」と思った瞬間、ムリに笑顔になったみんなが一斉に相沢のもとへ駆け寄って来た。
「相沢さん、元気になったんだね……!」
「心配してたんだよっ」
「よかったな相沢」
「顔にも全然傷ねぇーじゃん」
「事故ったって聞いた時はびっくりしたよ!」
相沢には記憶がないことはみんな知っている。事故にあったっていう口裏も合わせた。
みんなが必死で塗り固めたウソで真実を隠す。
相沢の自殺を。
俺は相沢を想ってそうした方がいいと思ったけど、こいつらみんなは自分のためなんだろうなと思うと急に冷めて来る。
相沢が自殺を思い出して自分たちを責め出すことを恐れて。



