叫びたいのは、大好きな君への想いだけ。



「はあはあ……」



息があがって、汗が額を滑り落ちる。


握り締めているスマホには仁からも相沢からも連絡は未だ入っていない。
立ち止まって膝に手を置いて肩で息をした。


俺って……無力だな……。


こんなにたくさんの人がいて、好きな女の子を見つけられない。


相沢がいないだけで、こんな世界の終わりみたいな感情が渦巻いてる。


相沢がいないだけで、俺はこんなにどうしようもなく情けなくなるぐらい、焦ってる。


ーー相沢ッ!


諦めずにもう一度と顔を上げて走り出そうとした時、目に入った姿に目を開く。


……相沢?


少し向こうの方に相沢がいた。


あれ、でもおかしい。


相沢が着ていた浴衣の色は確か紺色だった。


……でも、向こうにいる彼女が着ているのは


ーーピンク色だった。