「だったらいいんだよ、もう。あんまり自分を責めすぎるな。相沢だって幸せになる権利はあるんだから……」
目線を合わせるようにうつむいた相沢の顔をのぞき込む。
相沢の不安や躊躇、戸惑い。
それらが彼女の眼差しからひしひしと感じられる。
その力強い瞳から涙がボロボロ溢れている。
相沢はきっと、俺にはわからないぐらい、悔やんで、悔やんで、毎日を生きて来たんだと思う。
だから自分の声を呪って、声を失った。
優花ちゃんのことを忘れろとは言わない。
きっぱり忘れて能天気に生きるのは違うとは、思う。
だけど、幸せになってもいいと、俺は思うんだ。
『仁くんにも私には幸せになってほしいって言われた』
ノートの中の文字。
相沢の顔は悲しそうに歪んでいる。
「みんな前に進もうとしてるだけだよ」
『…………』
「大丈夫。誰も優花ちゃんの痛みも苦しみも忘れない。仁は特にね」
あいつは絶対に忘れない。忘れてない。
今でも優花ちゃんが大好きだ。
あいつを見てればわかる。



