俺はずっと杏花の手を握っていた


支払いが済み歩いていると…


「ねぇ、あそこのお店入って良い?」


杏花が指差したのは財布の専門店


休日ということもあり中はお客さんでいっぱいだ


「みてみて、やっぱり杏花ちゃんだよ。彼氏さんかっこいいって。いつの間に彼氏出来てたんだろうね?」


俺らの噂してるから杏花の腰に手を回した


「可愛いなぁ…」


財布を見ながら呟く杏花


それは薄いピンクの春らしい財布


「買わねーの?」


「うん。お金ないし我慢する」


それだけ告げると俺から離れ店内を出る


「杏花、俺を置いて行くな」


再び、がっちりと手を握った


「置いて行ったつもりじゃないけど…」


顔を見るとキツそうだ


「休憩するか?」


俺は誰も居ないベンチを指差した