一連の報告を終え、麻幌が帰って来たのは翌日だった。

亥月への土産と猫達のエサを持ち、いつものルートで構内に入る。

「あれ…どうしたんだ?黒子?」
怯えて、陰から顔だけを覗かせる黒猫に気付く。

「お前、白子か?ん?ケンカでもしたのか?」
毛繕いでは届かない首元に変色した血に気付く。

「亥月はまだか?どうした?怯えて…」
二匹を抱きかかえる。

「あの…お話良いですか?」
振り返ると、和やかだが張り詰めた空気を醸し出す警官が立っていた。


「亥月が?」

「そうです…心当たりは?」
学生証といつもの守衛が麻幌の身分を証明してくれた。

「ありません…俺、猫を頼んで実家に帰
ってたんで…」

「でも、その期間も講義に出てる事にな
ってますね?」

「それは…亥月が代返してくれたからです…まだ、疑いが晴れないなら家に連絡して下さい…」
また、紡衣に小言を貰う事になるだろう、五月女にも連絡が行っているだろう…と、考えながら答える。


「…事実の様ですね…失礼しました」
別の警官からの連絡を受け、やっと麻幌は解放された。

「亥月の病院は?」
亥月の居場所を聞き出し、走り去る。

「警部…」

「ああ…ピアスは沢山開いてたが珍しい事じゃないだろ…話は事実だったし、例の誘拐事件でピアスの男には不信感を抱いてしまうな…」
苦笑いを浮かべ麻幌の調書を仕舞う。