「せっかく買って貰ったのに…」
「諳…お前…」
社を抜けて屋敷に戻った。
「…亥月…」
諳が服の裾を握る。
「何?」
「私を怖がらないでくれるか?」
「ここの人達は諳をそんな目では見ないよ…ほら…紡衣様に知らせに行くぞ!」
諳の前髪をくしゃくしゃ撫でると歩き出す。
「姿は現さなかったの?」
荷解きもしないまま社で紡衣に話す。
「あの川…浅いよな?かなり深く渦巻いて見えた…」
今頃になって、変な汗に気付く亥月。
「それは、お前を飲み込もうとする位だよ?相手(蛟)も必死だ…で…諳様が?」
「ああ…咄嗟ゆえ…亥月のノートを破ってしまった」
水に濡れ破れた三枚の紙片を亥月が差し出す。
「これを諳様が?」


