「亥月…どっか行くのか?」
作務所付近で数人の巫女や参拝者と遊んでもらって諳が亥月に気付く。
「買い物だ…」
「私も行く!良いだろ?」
腰辺りにまとわり付く諳を引きずる様子を巫女達が見て笑う。
「分かった!分かったから離れろ!」
「行って来ます」
諳が嬉しそうに巫女達に手を振る。
「歩きだからな?ちゃんと歩けよ?」
「うん!何を買うんだ?」
「レポート用紙だよ…休学理由が理由だけに、大学側がレポートの出来で単位を考えてくれる…って連絡があったんだ」
この数日、確かに食事の時以外、部屋から出て来る亥月を見て居ない。
「そうか…駅まで行くのか?」
「そうだよ…」
この辺りで一番拓けている中心街へ着いた。
「この前は車だったから分からなかったが…高い建物があるな」
キョロキョロする諳の肩に亥月は手を掛ける。
「東京程じゃ無いだろ?迷子になるなよ?」
「分かった!」
気を引き締めた顔をして、亥月の服の裾を掴む。
「そこ持つのか?まぁ…いいけど」


