諳が紡衣の元に来て数日が経つ。
五月女は翌日には手続きを済ませ戻って来た。
いつも垂らしたままだった諳の髪は、
五月女により前髪が作られ、綺麗に結わえられた。
(…うーん…)
起き抜けの諳は、一番に玉座殿を覗きに行く。
玉座には、亥月を司る玉だけが鎮座していた。
「まだ、麻幌は帰って居ませんよ?」
後ろから紡衣の声がする。
「分かっておる…」
恥ずかしそうに諳が振り返る。
「暇なら私と護符でも作りますか?この時期は進学や就職の需要が多くて…」
「嫌だ!護符は苦手だ!」
長い髪を靡かせて諳は五月女の居る部屋へと走り去る。
(やれやれ…)
同じく空の玉座を見て紡衣も溜め息をつく。


