「いや…謝るのは俺の方だ…」
遠慮を知らない友達の様に接する亥月だが、今までに何度か危険に巻き込まれている。

「麻幌様…」
深々と頭を下げる麻幌に五月女が近づく。

「まず…俺の容体はどうでもいいのか?母上…」
病院着に袖を通しながら亥月が苦笑いする。

その時だった…。
カラカラと軽い音がして、ドアが開く。

「あれ…違った…」
顔を出したのは、亥月と同じ病院着を着た少女だった。

その姿に、麻幌は不自然に部屋の死角に入った。

「どうしたの?」
五月女が近づく。

「お部屋間違えたの…私の部屋にもお巡りさん立ってるから…」

麻幌と亥月が顔を見合わせる。

「そう…お部屋分かる?気を付けてね」
五月女だけは表情を崩さず少女を見送った。

「…お前、不自然に隠れただろ?知り合いか?」

「…もう、会わないだろうと思ったのにな…」

「まさか…か?」
亥月が目を見開く。

部屋を間違えた少女は…

麻幌が記憶を消し忘れた少女だった。

「同じ病院に居たのか…」

「警察御用達な病院なんだろ…検査入院してるって言ってたしな…」

「まぁ…あの子が?でも…どうして入口の警官に止められないの…?」
五月女はドアを開けた。