「中庭でか?」
亥月に促されて小声で麻幌が聞く。
「ああ…無防備だったのは認めるが何も感じなかった」
「何処をやられたんだ?」
病院着の下に袈裟の様に巻かれた包帯が覗く。
「左の肩だ…背中からやられたのにな…」
病院着を脱ぎ、麻幌に背中を向ける。
背中には、二つ並ぶ小さなケロイドの様な跡が見えた。
「指の跡…か?」
「多分な…そこから前に来てる…」
袈裟掛けになった胸元の包帯の下は、
切り傷と言うよりは裂傷の様だ。
縫合の幅が広い。
「他に何か見たか?」
「見てはいない…聴いた…」
「声をか?」
「いや…パタパタと走り去る軽い足音だ」
「…子供?」
「だと…思う…背中の跡は子供の指先位の大きさだろ?」
「子供の能力者?!」
麻幌と亥月、どちらと無く言葉を続け様とした時に病室のドアが開いた。
「五月女…」
立っていたのは亥月の母親の五月女だった。
「母さん…麻幌が知らせたのか?」
(いや、違う…)と否定を口にする前に五月女が言う。
「違うわよ…警察から知らせが来たのよ…すみません麻幌様…」


