「すみません、橘 亥月の病室は?」
義務的に告げられた待機の返事に少し苛立ちながらキーボードを叩く音を聞く。
「709号の特別室です…」
「ありがとうございます」
辿り着いた病室の前には、警官が立っていた。
「橘さんの友人の保都(たもつ)です…」
チラリと自分を見る警官に名前を告げる。
「…どうぞ…」
敬礼をする彼の横を通り病室に入る。
二重になった扉を開け、覚悟に近い物を決めて亥月の元に近づく。
「麻幌…」
先に声を出したのは亥月だった。
「お前…何やってんだよ!」
点滴の管を付けた亥月に声を荒げる。
「俺、病人だぞ?もう少し労われよ…あと…声を潜めろ…警官立ってたろ?」


