その後、他愛ない話をしながら歩いていると、自分の家が見えてきた。 「ほら、ここまで来れば平気だろ」 ぱっと手を離しながら結羽ちゃんが言う。 「そうだね、ありがとう」 「あぁ、じゃあな」 そんな簡単な言葉だけを残して、結羽ちゃんの背中は暗闇に消えていく。 別れる瞬間、少しだけ名残惜しい気持ちを、気づかないふりした。 「どうせ、もう逢うこともないだろうし」