「あ…は、はい。」 恥ずかしくて、恥ずかしくてまともに返事が返せなかった。 「歩けそう?」 その人は私のそばにしゃがみ込む。 私はまともに顔も向けられず、うつむいて答えた。 「あ、ちょっと擦りむいただけなんで……」 「でも血が出てる。……ちょっと待ってて。救急箱持ってくるから」 私はあわてて答える。 「いいです!このくらい全然平気……」 断ろうとした私の子よろしく場を無視して、ピアノの人は家に向かって走った。