2人にはその道の違いがまったくわからない。

 だが、観光客は決して踏み入れてはならない場所というものがすぐそこに存在するのだ。

 別の州に住んでいた青司だが、その危険な香りは絶対に見逃さない。

 平和なようでいて、それはただの仮面に過ぎない。

 気を許せば牙を剥く、どこか油断のできない国──青司はそう認識している。

 アメリカでの生活は、青司にとって苦痛でしかなかった。

 拭いようのない人種の壁は、いつでも青司を責め立てる。

 そういう環境が悪かったと言えば簡単だが、そんなことで自分を慰めたくはない。

 誰にも負けないようにしてきた、これからだってそうしていくつもりだ。