「そんな風には感じませんけど」

「それならそれで良い」

 言って、ブランデーを取りにキッチンに立ち上がる。

 今までで一番解りにくい相手だな……と、その背中を見つめながら考えた。

 大抵の人間には、その人の触れてはならない心の部分、

「NGワード」が存在する。

 これの無い人間はほぼいないと言っていいと思う。

 しかし、このベリルという人にはそれが見あたらない。

 隠すのが上手いのか、

本当に無いのか──それすらも計りかね、陣は複雑な表情を浮かべた。