「走れ」

 青司はつぶやいて絵理の背中を促す──男たちが向かってくる反対の方向に駆けると、それを見た数人がスーツの懐に手を突っ込んで歩みを速くした。

「おいっ、まさか撃ってきたりとかは無いよな!?」

 走りながら青司に問いかける。

「ここは日本じゃない」

 淡々と答えられた言葉に陣は冷や汗を垂らした。

 そんな陣の耳に軽い破裂音が届き、足下のアスファルトに何かが弾かれる。