「行くぞ」

「そんなに急ぐなよ」

 陣が呆れて口を開く。

 何もかもが新鮮で楽しいのは解る。しかし、急いでもいい事は何もない。

「何を言う。朝の通勤風景を見逃してはならん」

「ああ……そういうこと」

 なんとなく納得し、青司とともに絵理を挟んで外に出た。

 清々しい朝にスーツを着込んだ人々が行き交う──テレビではよく見た風景が眼前に拡がり、絵理は目を細めた。