「いい加減にしろよ。そのしれっとしたツラもこれで終わりだ」
その男──ミュゼフ・ロフナー──は、流暢な日本語で発しベリルを睨み上げて舌打ちした。
ベリルは無表情に男を見下ろすと、おもむろに靴を履いて向き直る。
「大の男が少女をつけ狙うのはいただけんな」
小さく笑んで皮肉混じりに発した。
「は、それで守っているつもりか!」
男はベリルに視線を向けながら懐から警棒を取り出し、伸ばしてふすまに投げつけた。
その警棒をベリルは目で追い、即座に縁側に飛び乗って居間と男の間に割り込む。
「!?」
突然、何かがぶつかる音がしてふすまが倒され、陣たちは驚きの表情を浮かべて目の前の光景に見入った。
陣が端末で見た男がそこにいて、その服装はちょっとしたミリタリーぽいものだ。
厚めの暗い服に黒いベスト、その中には何が入っているのか考えたくない。