別の場所──屋敷の敷地内で黒い影がうごめいていた。こういった屋敷は床下が広く空いている。
「……」
影は周囲の気配を探り、床下へと身をかがめる。
数歩ゆっくりと踏み入ったとき、クシャリと何かを踏みつぶした音がして視線を降ろすと、そこには潰れた生卵……。
どうやら踏みつぶしてしまったらしく、男だと終われる影は眉をひそめた。
そもそもどうしてこんな処に生卵があるのかが解らない。
若干、気分を害したが侵入を続けるべく床下を進んでいく。
すると今度は妙なものを踏んだようで、再び足下を見やる──そこにはケチャップの水たまり。
「……っ」
男はますます困惑してしばらく思案するように動かなかった。



