花火を前に何てムードの欠片も何もない会話をしてんだろ。いやまぁ、別にいいか。
花火の夜に恋人と二人きり、そこでイチャイチャしなきゃならない決まりなんてないんだから。
「来年もこうやって見ようね」
「勿論です。再来年もその先も、こうして見ましょう」
「じゃあ約束」
私は小指を差し出した。先生は私の小指に自分の小指を絡ませる。
「ゆーび切ーり拳万、うーそ吐ーいたーら針千本以上飲ますから破んじゃねぇ〜ぞ、ゆーび切った!」
「……途中、すごい怖いこと聞いたような気がするんですが」
「元のまんまでも十分怖いでしょ」
「そうですけども」
「約束だよエドガー。私頑張って針集めて待ってるから、破らないでね」
「実行するんですか!?」
「冗談だよ。でももし破ったら針千本より怖いことするからね」
「肝に銘じておきます……」



