私達はお社の後ろにある秘密の抜け道を通り、小高い丘に来た。
「もうすぐ花火だねー」
「誰もこの場所を発見しないといいんですけどね」
「大丈夫大丈夫」
私はキャップを外した。鬱陶しくて仕方なかったんだよね。あー、涼し。
先生もキャップとサングラスを外す。あ、いつもの先生だ。そりゃそうか。
「あ、千鶴ちゃんアップですね」
「そうだよー」
「いつにも増して可愛いですよ」
「そりゃどうも」
「あ、始まりましたね」
夜空に花火が打ち上げられた。色とりどりの花火が咲いては散っていく。
「やんや火の花
翳みの望月
えいやさえいやさ
跋扈夜の花」
私は大声でそう叫んだ。今年出来た友達、カノンと一緒に作った詩。結構気に入っている。
「ば、ばっこ、よのはな?」
「友達と一緒に作った詩だよ。別に深い意味はないんだ。花火が綺麗なモンだから、折角の満月も人の目に映らないねーって話から発展して」
「へぇ……。確かにそうですね。今日は満月じゃありませんが、月なんて念頭にありませんでした」



