その夜、私は先生に電話をかけて、神崎さんに、自分には彼女がいると伝えてほしいと頼んだ。
『わかりました。妙な罪悪感がありますが、仕方ありませんね』
「そっちが悪いんだよ」
『ぼ、僕ですか……』
「当たり前でしょ」
『ですが、ちょっと嬉しいです』
「は?神崎さんに好きになってもらえたのが嬉しいの?」
そうです、とか言ったらぶん殴る。いやもう半殺しかな、うん。
『違いますよっ。千鶴ちゃんにこんな風に気にかけてもらえたのが嬉しいんです』
「私?」
『だって千鶴ちゃん、部屋で香水の香りがしても何も言わないし、夏なんかプールで放置されました』
「あー……。でもほら、香水は学校だけだし。流石に家から香水の匂いしたら気にするよ。夏のは見た瞬間に諦めた」
『……まぁ、いいです』
「じゃあ、よろしくね。おやすみー」
『はい、おやすみなさい』



