先生は椅子に座り、私は床で仕事の手伝いをする。その間、会話が途切れなかったのは少し珍しいかもしれない。



「千鶴ちゃんはどうしてお寝坊さんが直らないんでしょうね」



「目覚ましが悪いんです。粗悪品ですよアレは。なので高性能な目覚ましにします」



「目覚ましだけの問題じゃないでしょう。夜更かしとかはしてないんですか?」



「日付が変わる前には必ず寝ますから。テスト間近な期間を除いて」



「ならどうして起きれないんでしょう?」



「超熟睡だからじゃないですか?」



その時、コンコンとノックの音がして、静かに扉が開かれた。え、誰?



「失礼しまーす……」



この声アレじゃね。神崎さんじゃね。放課後まで付きまといに来るとは……。



「あ、先生!……と、天瀬(そらせ)さん?」



「神崎さん、どうかしましたか?」



先生がやんわりと声をかける。神崎さんはハッとしたように先生を見、少し顔を赤くして鞄から教科書とノートを取り出した。



「わからない所があったので……。コレなんですけど」



「コレはですね……」



そんな二人の会話を右から左へ受け流しつつ、私はちゃんと仕事を進めた。