ボーッと眺めていると、視界の端に、小走りで向かってくる大輔の姿。
目の前までくると、大輔はニッコリ笑った。
「待たせてごめんね。寒くなかった?」
大輔は今日も徒歩らしい。
両手をポケットに手を入れながらだらしなく立つ姿は、やっぱり菜摘の胸を高鳴らせた。
それに加えて笑ったまま頭を撫でるから、また真っ赤になってないか心配だ。
「ううん、天気いいし暖かくて気持ちいいよ。てか早くない?」
初めての私服にドキドキする。
「まあタクシーだからね。どこ行く?」
「またタクシーですか。美香たちは?」
「どうせ寺もまだ寝てるだろうし、ほっとこ」
…嬉しいけど、本当にいいのかな。
「ちょっとだけ。行こ?」
手を引かれ、そのまま自転車にまたがる。
服越しなのに―
一瞬にして、触れられた部分も、顔も熱くなった。
ドキドキする。


