永遠に続くかと思われた沈黙の中、切り出したのは大ちゃんだった。

「ほんと久しぶり。懐かしいね」

セブンスターをくわえる。

煙草も変わってないんだ…。

「5ヶ月ぶりだもんね」

「だな」

元々端っこに停めてあったため、あまり街灯が入り込まず、車内は暗い。

そのせいか、白い煙がハッキリと見える。

「でもやっぱりお前変わんないね。落ち着く」

この言葉が、すごく響いた。



菜摘もだよ。

あんなにうるさかった心臓が、もう落ち着いてる。



「…あのね。菜摘…全部知ってるよ」

言わなきゃ。

ずっとずっと、伝えたかったことを。

「全部って?」

膝の上で拳を握り締める。

「…大ちゃんが言ってた、『色々』」

パンフレット見たから、と付け足すと、大ちゃんは『そっか』と呟いた。



違うのに。

伝えたいことは、そんなことじゃないのに。



でも─

もう少しだけ。

大ちゃんといたら、どうしても『もう少しだけ』と願ってしまう。



この2年間─

菜摘はずっと、この位置にしかいられなかったから。