いつもの昼休みの風景。
大輔と遊んだ翌日にまずしたことは、伊織に一部始終を報告。
「いや…うん。さすがにすごいわ。運命ってあるのかね」
さすがの隆志も、腕を組みながら降参する。
そんな隆志に、勝ち誇るように笑って見せた。
「アドレス交換できたか?」
「したした!」
大輔からだけど。
「んー…でもなあ。すごいとは思うけど、軽いだけじゃん。山岸」
伊織が綺麗に足を組み、菜摘に向けてビシッと指を指す。
はしゃいでいた菜摘と隆志もピタッと止まった。
「…やっぱそうかな」
否定できない。
軽くないよって、自信なんて持てない。
だって、大輔のことまだ何も知らない。
菜摘はいつからこんな臆病になったんだ、本当に。
しゅんとしていると、隆志が菜摘の肩に手を置いた。
「まあいいじゃん。軽いかどうかなんて、これから知っていけばいいし」
隆志が伊織を横目に見ながらなだめる。
「それに、これで行く高校は決まったろ?」
確かに大輔と出会ったことで、志望校は自然と決まっていた。
菜摘は自他共に認めるほど単純だ。
「…うん、そだね」
素直になれない菜摘は、俯いて視線を逸らす。
表には出さなかったけれど、なかなか前に進めなかった菜摘を、ふたりはいつも影で支えてくれていた。
本当にありがたくて、少し恥ずかしい。
「…まあそうだよね。あたし勉強教えるから、頑張ろうね」
「髪も黒くしなきゃ。来週は願書の写真撮るし」
ふたりに押され、菜摘は静かに頷いた。
今日帰ったら、髪を黒くしよう。
ふたりの温かさに応えたい。