“またね。”

帰り道、理緒に電話をかけても出なかった。

由貴と麻衣子にかけても無反応。

寝ちゃったのかな…。

何度かけても出ない。

今日は泊まる予定だったから、家の鍵も持ち歩いていない。

どうしよう…。



「…俺が朝まで一緒にいてあげよっか?明日仕事休みだし」



状況を察したのか、大ちゃんが言った。

目は合わない。

違うかな─

合わせられなかった。



もう夜中の2時。

その言葉に甘えるしかないと思った。

行く場所なんて1つしかない。



「…うん。ごめんね」



それでも菜摘は、大ちゃんを拒めなかった。

だって─

これが最後になるかもしれないから。

いつ終わりを告げるかわからない恋だと、気付いていたから。



本当に腹が立って、口論になって、『帰る』とまで言ったくせに

結局こうなっちゃうんだ。

朝まで一緒にいられることを、嬉しく思ってる。



かっこ悪いよね─