30分ほどで携帯が鳴った。

大好きな人の指定着信音。

大ちゃんから『着いたよ』のメール。

すぐ外に出ると、少し離れたところに車が1台。

胸が高鳴るのを感じた。

小走りで近付き、助手席に乗り込む。



「大ちゃん、なんか久しぶり」

「おー。なんかお前犬みてぇ!」

…久しぶりに会ったのに、いきなり犬扱い?

大ちゃんは『可愛い』と言いながらひたすら笑う。

バカにされてることはわかっていたけど、大ちゃんに『可愛い』と言われたのは初めてだったから、実はちょっと嬉しかったり。

どんなにオシャレしても言ってくれなかったのに、このタイミングで言われたのは少し癪だけど。



「どこ行きたい?」

「カラオケー」

「こんな時間から!?」

もう2時半。

菜摘の住んでいる地域は、カラオケなんて3時か4時まで。

今から行ってもなあ。

「あるよ?カラオケ」

「え?どこ?」

朝まで営業してるカラオケなんて近くにあったっけ。

街中はちょっと遠いし駐車場もないしなあ。

次に言われる言葉を予想できるわけもなく、何気なく聞いた。







「ラブホ」