コンビニへ駆け込む。

驚いて見てくる店員や客の視線も気にならないほどに息を切らせながら。

雑誌コーナーの前にしゃがみ込むと、言葉では言い表わせないほどの恐怖が込み上げた。



いつか亮介にされたこと。

薄暗い中でハッキリ見えた、男の笑った顔。

しゃがみ込んだまま両手で腕を掴み、異常なまでに震える。



─助けて…。



その時、菜摘の脳裏を横切った人。

安心させてほしくて─

自然と指が動く。

思うがままに名前を表示し、震える指で発信ボタンを押した。



呼び出し音が数回鳴っても、なかなか出る気配がない。

仕事中かな…。

ほんの数秒だったかもしれないけど、その時の菜摘にはとても長く感じられた。

諦めて切ろうとした時…─



【…もしもし?菜摘?】



少しの雑音とともに聞こえたのは

とても優しく、少し懐かしい声。



「大ちゃん─」